配当狙いの投資は「もしもの備え」が大切:安全な高配当利回り投資とは?
最近流行りの「配当狙い」の投資には弱点が
最近配当狙いの投資が流行っています。定期預金にほとんど利息がつかないなか、三菱UFJや住友商事といった一流企業でも配当利回り*1が5%前後もあるとなれば、人気が出るのも当然のことなのかもしれません。
このような「配当(インカムゲイン)狙い」の投資は「売買差益(キャピタルゲイン)」狙いの投資よりディフェンシブな投資だと言うことができます。年間5%程度ですが、確実にお金が入ってくるのを目的としているからです。
しかし、ディフェンシブな投資だからこそ弱点があり、その弱点を克服するために絶対にやらなければならないことがあります。それが「分散投資」です。
分散投資が必要な理由。
①無配・減配リスクの存在
②頑張っても無配リスクは回避できない
③分散投資によってリスクを軽減できる
①無配・減配リスクの存在
企業がなぜ株主に配当できるかというと利益があるからです。タコ足配当のような稀有な例を別にして、企業は利益の何%程度を配当に出すか決めていて、その割合に基づいて配当額を決めます。
つまり利益が減れば配当も自ずと減りますし、赤字が続けば無配になるのが普通であす。
利益が減ってくれば当然株価も下がってくる可能性が高く、元本を回収することも難しくなります。
逆に配当さえ下がっていなければ、仮に株価が下がっても毎年の貰える金額に変化は起きなません。
つまり「配当狙い」投資の最大の敵は「無配・減配リスク」だと言えます。
②頑張っても「無配・減配リスク」は回避できない
記憶に新しい東北の震災で原発事故を起こした東京電力の株価は1/10以下に下がり、無配となりました。東京電力は株価が安定しており、高配当なことから「最も安定した投資対象」の1つとして数えられており、古参の投資家にも人気のある銘柄でしたが、現在は見る影もありません。
また、眼鏡の弐萬圓堂のように東北に本部を置いていたため機能不全に陥ってまともに営業できなくなった企業もありました。
粉飾決算も見抜くのが困難であり、問題が露呈した場合、株価が白紙同然となることすらあるリスクです。私たちは監査法人ではないので、企業の売上や資産が実際に存在しているかどうか確かめる術はありません。監査報告書によって財務諸表の信頼性は一定担保されているものの、それでも今日に渡り粉飾決算が横行していることは否定しようのない事実です。実際、不適切な開示を行った企業の数は、ここ10年で見ても増加傾向にあります。
数値引用元:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20191204_01.html
③分散投資によってリスクは軽減できる
投資の質を維持できるなら、銘柄は分散すればするほど良いです。
例えば配当利回り5%の銘柄3個に投資するなら、1銘柄が経営破綻したとき、10年待たなければ投資を回収できません。
では、10銘柄に投資していたら?
1銘柄が破綻しても2年待つだけで配当によってほぼ賄うことができます。
それなら20銘柄に投資していたら?
たったの1年待つだけで配当によって破綻分をほぼ賄うことができてしまいます。
このように、分散投資を行うことでリスクは軽減できるのです。
分散投資に対する疑問
ここまで話を聞いて、賢明な投資家の方々はいくつか疑問を抱いたと思います。その疑問に対して多少ではありますが、回答を用意しておきました。
①分散することによるリスク
②バフェットは集中投資をすすめているが
①分散することによるリスク
分散すればするほど沢山銘柄を持つことになるので「外れくじ」を引く確率は上がります。
また、沢山の銘柄に投資しようとすればするほど投資前に行う「下調べの質」も低下する傾向にあるでしょう。
ただ、「もしものとき」を考えるなら絶対に分散投資をおすすめします。
ディフェンシブな投資を行うのは、「確実に儲けたい」からに他なりません。「自分は外れくじを引かない」という運に賭ける投資スタンスは確実に儲けることを目的としたディフェンシブな投資方針とは相容れないものです。
たとえ外れくじを引いたとして他の銘柄でカバーできるように分散することが、ディフェンシブな配当狙いの投資と合致するのです。分散をせず外れくじを引いてしまったとき、ディフェンシブな投資では投資額の回収に非常に長い時間がかかることとなります。
②バフェットは集中投資をすすめているが
配当利回りの投資もバフェットの投資も「ファンダメンタル投資*2」です。ファンダメンタル投資なら少数銘柄投資であるべきだ、と考える方もいるでしょう。
しかし、バフェットの投資は配当だけを狙ったものではありません。
配当利回り重視のディフェンシブな投資の場合、インカムゲインはせいぜい6%程度です。
バフェットの投資対象のROEは、昔は15%程度。現在構築しているポートフォリオでは20%以上の水準となっております。
つまりインカムゲインとキャピタルゲインを合わせて毎年20%近い利益を見込める銘柄に投資しているわけです。だから許容できるリスクも高いのです。
バフェットの真似をするのであれば、高配当利回りかつ高ROE投資をしなければなりませんが、日本の株式は全体的にROEが低いので、日本株で真似をするのはなかなか難しいことでしょう。
「配当狙い」の投資をするなら「分散投資」を心がけよう
「配当狙い」のような堅実ですが少額しか稼げない投資において、分散が不十分だと、減配や無配となったとき投資の回収がほとんど不可能になってしまいます。しっかりと分散して減配や無配になったときのリスクに備えることが大切だと言えます。
ただ、分散しようとするあまり、「将来の利益の減少が確実な企業」に投資してしまうようでは意味がありません。
自分の中でしっかりとした投資基準を持っておき、その基準を満たす範囲内で分散投資をするのが堅実に稼ぐコツだと言えるでしょう。
今週のお題「もしもの備え」